過去(2023年以前)の仮想通貨の価格変動及び価格決定とその要因

目次

  • はじめに
  • 仮想通貨とは
  • 仮想通貨の定義
  • 仮想通貨の入手方法と用途
  • 仮想通貨の価格変動とその要因
  • 仮想通貨の価格推移
  • 仮想通貨の問題点
  • 今後の仮想通貨市場
  • 仮想通貨への期待と不安
  • 仮想通貨市場を盛り上げるためには
  • まとめ
  • はじめに

    現在、新型コロナウイルス感染やロシアとウクライナの戦争等の影響で経済は不安定な状態が続き、日本では円安も進行している。2020年初期、新型コロナウイルスの発生で世界的に株価は急落したが、世界各国で大規模な景気対策や金融緩和を行ったことで大幅な下げを回避した。日本では、2020年5月22日の金融政策会合で10年物国債金利がゼロ%程度で推移するように上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う長金利操作や、ETF、J-REITの積極的な買い入れを決定し[1]、その3日後には、新型コロナウイルスの緊急事態宣言解除が発表されたことにより、日本経済は回復傾向になり、世界全体でも4月から6月にかけて底打し、7月から9月にかけて回復傾向になった。その後、感染再拡大と景気対策等を繰り返しながら日経平均株価は徐々に上昇した。2021年9月14日には、新型コロナウイルスの新規感染者の減少による経済の正常化期待や新型コロナウイルスのワクチン接種の進展、投資家の心理が改善し、海外投資家も積極的に日本株を買い始め、買いの優勢な展開が続いたことでバブル崩壊後の最高値を付けて、31年ぶりに3万0795円78銭という高値を記録した[2]。この時は、バブルとも言われたが、2022年、年明けから世界的に金融市場が全体的に下がり、1月の日経平均株価では、1日だけで約800円も下落した日が3回もあった。このような状況の中で、2022年2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことにより、物価上昇や石油価格高騰、円安の進行などが経済に大きく影響し、これは現在も続いている。

     2020年初期から現在まで、経済を不安定にさせるような出来事がいくつも起きており、その結果、家計や生活にまで影響がでてしまった人がいるとは思うが、それとは反対に、独自の様々な手法の資産運用・金融取引で多額の利益を出した人もいるはずだ。その例として、株取引や金取引、外国為替証拠金取引等が挙げられる。しかし、中でも最も高い利益を出した資産は仮想通貨であると考える。現在、仮想通貨の相場は、2022年11月現在下落しているが、仮想通貨市場で最も取引量が多いビットコインと呼ばれる仮想通貨では、2020年3月中旬の時は54万7089円であったが、2021年11月上旬には764万5000円となり、約1年9ヵ月で13倍にもなった。しかし、その後は半値以下になっている。しかし、仮想通貨市場では、短期間で価格が10倍以上になるのは普通であり、また、たった1日で価格が10倍になった仮想通貨もある。仮想通貨は、価格変動が激しいことから投機的な投資ともいわれているが、近年、仮想通貨事業に参入している企業が増えていることも現状である。


    [1] [日本銀行, 2020]参照先: 金融政策

    [2] [日本経済新聞社, 2021]参照先: 日経平均、終値3万0670円 31年ぶりに高値

    仮想通貨とは

    仮想通貨の定義

    仮想通貨とは、簡単に説明するとインターネットの世界で発行され、取引等に使われる暗号化されたデジタル通貨であり、仮想通貨は、パソコンやスマートフォン等で見る数字だけで、硬貨や紙幣のような形がない通貨なのである。仮想通貨は、別名暗号資産ともいわれている。仮想通貨から暗号資産へ名称が変更された理由として、2018年に行われたG20サミットにおいて、「仮想通貨は通貨としての特性を欠いていると指摘され、国が保証している仮想通貨法定通貨にはほど遠く、流通体制や管理体制が脆弱すぎると問題になったことである。また、反社会的組織による資金洗浄や課税の逃げ道になることなども問題となっており、その対策として、通貨と明確に区別するために暗号資産(Crypto Asset)と名称変更されたのである。そして、国際的な名称変更に合わせて、日本でも暗号資産に改称することが、2019年5月に成立した改正資金決済法によって定められた。[1]

    仮想通貨は、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されている。

    「 1. 不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる

      2. 電子的に記録され、移転できる。

      3. 法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない    [2]

    仮想通貨は、国や中央銀行等が発行しておらず、開発者によって管理、発行されており、国や国家組織が価値を保証する通貨ではない。流出などのハッキングや詐欺被害にあっても補償してくれる機関はない。また、詐欺被害にあっても返金率が低く、被害届を出しても受理してもらえない場合がある。金取引の場合は、現物でその価値が保証されており、株取引の場合は、株式を発行している企業が保証していることになるが、その企業が破産・倒産すれば価値がなくなる。よって、仮想通貨は、自己責任で仮想通貨の取引や運用をしなければならないのである。つまり、価値を保証された通貨でもなければ、法定通貨でもないため、仮想通貨を通貨として、また、投資対象として保有する場合には、自己責任で仮想通貨を保有しなければならないのである。そして、詐欺やハッキング被害にあわないためにも、最低でも金融庁や財務省、暗号資産協会に登録された暗号資産交換所・取引所を使うべきである。現在、仮想通貨の中で一番有名で最も取引されているのはビットコインである。ビットコインは、2009年に世界で最初に作られた仮想通貨であり、仮想通貨市場内の時価総額では最大である。そして、ビットコイン以外のほとんどの仮想通貨は、ビットコインの価格変動から影響を受けており、ビットコインは、仮想通貨市場では中心的な存在なのである。

    [1] [堀龍市, 2019/12/25]参照先: 暗号資産の基本と仕組みがよくわかる本

    [2] [日本銀行, 日付不明]参照先: 仮想通貨とは何か

    仮想通貨の入手方法と用途

    まず、仮想通貨を購入するには、インターネット上にある仮想通貨取引所や交換所に登録しなければならない。その後、与えられる銀行の口座番号のようなウォレットアドレスやQRコードをやり取りする相手と交換し、そのウォレットアドレスの入力やQRコード読み込みをすることで様々なやり取りが可能にある。そして、このやり取りは電子データ上に記録されており、その電子データには、ラベル(仮想通貨の取引所名・交換所名)や宛先(ウォレットアドレス)、また、金額や仮想通貨の数量等が記録されている。

    仮想通貨の用途としては、法定通貨とはあまり変わらず、決済・送金・入金・出金・投資・保存(ここでの保存の意味は、法定通貨では貯金等のことを指し、仮想通貨では取引所の口座に入れておくことを指す)等ができる。法定通貨の場合は、銀行などの金融機関に行き、そこでお金を引き出したり、預けたりすることもできる。仮想通貨の場合は、仮想通貨取引所や仮想通貨交換所があり、そこで円やドルを仮想通貨に変えることができる。また、仮想通貨を円やドルに変えることもでき、銀行等の金融機関に行かなくても法定通貨と同じようなやり取りが仮想通貨で出来てしまい、これを管理者の存在しない非中央集権型の電子決済システムまたは中央管理者不在電子決済システムといい、ビットコインをはじめとする仮想通貨の最大の特徴である。パソコンやスマートフォンで、インターネットに繋がっている環境であれば、いつでもどこでも以上のやり取りが全てできるのであり、仮想通貨の魅力であるとも言える。仮想通貨の決済に関しては、現在、法定通貨のようにどこの店でも決済が出来るというわけでもなく、仮想通貨決済を導入している店でしか仮想通貨での決済はすることはできない。近年、世界的に仮想通貨決済ができる店が増えてきている。しかし、日本では、未だに一部の店でしか対応されておらず、日本国内で仮想通貨決済を導入している店の数は約300店舗ほどしかない。日本国内で、仮想通貨決済を導入している店は、誰もが知っているような店では、眼鏡やコンタクトレンズ、補聴器を販売する全国チェーン店のメガネスーパーや全国に複数店舗を展開する家電量販店のビックカメラ、コジマぐらいしかないのである。世界では、スターバックスをはじめ、ペイパルや、マイクロソフト、アマゾン、コカ・コーラ、ケンタッキー・フライド・チキン、ピザ・ハット、バーガーキング等、その他多数の企業が仮想通貨決済を導入しており、日本での仮想通貨決済事業は世界と比べると、かなり遅れている。

     近年、海外では、労働の対価として給与支給に仮想通貨を適用する企業が増えてきており、仮想通貨で給与を受け取る事例が増えている。「給与決済企業のdeelは、2022年2月28日に、グローバルな雇用状況についての2021年分の年次レポートを発表し、南米地域やアフリカで、暗号資産(仮想通貨)で給与を受け取るフリーランス労働者が増えていると報告した。[1]

    ・図1            

    ・図2

    図1・2[出典] https://coinpost.jp/?p=325019

    (2022年2月28日). COINPOST.仮想通貨での給与受け取り、南米アルゼンチンで増加の記事の円グラフを基に筆者作成. 参照日: 2022年11月13日

    図1は、フリーランス労働者に対する仮想通貨での給与支給事例の国別割合であり、図2は、その給与支給に使用されている仮想通貨であるが、仮想通貨による給与支給の背景として、「フリーランスとして海外の企業に雇用される人々の増加や、コロナウイルスのパンデミックにより、地元地域の雇用が減少していること、そして、リモートワークを促進するデジタル技術が普及したことなどを挙げている。[2]」ニュージーランドでは、2019年9月から3年間、仮想通貨での給与受け取り、またそれに対する課税を合法化にした。2019年8月に、ニュージーランドの内国歳入庁(IRD)は、「所得税法の下、給与支払いが雇用規約に基づいて行われたサービスに対するもので、固定の金額であり、報酬の一部として定期的である限り、従業員の給与を暗号資産で支払うことができるとし、支払われる暗号資産は、法定通貨に交換可能でなければならない[3]」と発表した。その他にも、2021年11月3日に仮想通貨(暗号資産)を支持していたエリック・アダム氏(民主党)は、アメリカニューヨーク市長選挙で当選し、2022年1月22日に初任給を仮想通貨で受け取った。エリック・アダム氏(民主党)は、ニューヨークをアメリカの中で最も仮想通貨にフレンドリーな都市にしたいと言及しつつ、ニューヨークを仮想通貨の拠点にしようと力を入れており、ニューヨーク市長の前にもマイアミの市長も仮想通貨で給与を受け取っている。また、2022年の1月には、ベルギーのブリュッセル地域の議員が、欧州初の一年間の給料をすべて仮想通貨で受け取る計画を発表する等、給与を仮想通貨で受け取る政治家も増えている。

    [1][2] [COINPOST, 2022]参照先: 仮想通貨での給与受け取り、南米アルゼンチンで増加

    [3] [coindesk JAPAN, 2019]参照先: ニュージーランド税務当局、仮想通貨での給与支払いを合法化

    仮想通貨の価格変動とその要因

    仮想通貨の価格推移

     2020年初期から2021年後期は、経済が不安定の中、金融市場をはじめ仮想通貨市場も盛り上がっていた。図3は、過去約6年間のビットコインの価格推移を表したものである。

    図3

    「2016年11月から2022年11月までのビットコイン価格推移」

    [出典]https://jp.investing.com/crypto/bitcoin/btc-jpy-historical-data. 金融アプリinvesting.comよりビットコイン時系列価格表を基に筆者作成.  参照日: 2022年10月25日, 参照先: BTC/JPY – ビットコイン 日本円

    2021年後期は、ビットコインの価格が一時約770万円あたりまで達していたが、現在は半分以下の300万円前後を推移している。ビットコインは、無限に発行することができなく、発行上限は約2100万通貨(209,999,99.9769BTC)と決められており、それ以上は発行できない仕組みになっている。これに関して、仮想通貨市場の価格に大きく影響を与ええるとされている半減期が存在する。この半減期は約4年に1回、新規発行されるビットコインのマイナー(採掘者)の報酬が半分になる仕組みであり、2140年頃にビットコインの発行枚数が上限に達するといわれている。「半減期の仕組みがあるのは、ビットコインの需給バランスを調整し、価格の高騰を抑えるためである。発行総量に上限がある以上、発行数量が同じままであると、すぐに上限を達してしまい、ビットコインの供給が止まることになるため、需要が増加すると価格が暴騰する可能性がある。そのために、供給量を少しずつ減らすことで、発行上限達成による急激な価格高騰が起こることを防ぐ狙いがある。[1]」そして、すでに2012年、2016年、2020年に半減期があり、最も半減期の影響が大きかったのは2020年であった。

    図4は、2020年初期から2022年11月までのビットコイン価格推移である。ビットコインは、2020年初期の新型コロナウイルスの影響により、数ヶ月で約半分以下になったが、その後、

    2020年5月の半減期により徐々に上昇し、2020年9月あたり

    から2021年5月ぐらいまでには大きく上昇した。

    図4

    「2020年1月から2022年11月までのビットコイン価格推移」

    [出典]https://jp.investing.com/crypto/bitcoin/btc-jpy-historical-data. 金融アプリinvesting.comよりビット

    コイン時系列価格表を基に筆者作成.  参照日: 2022年10月25日, 参照先: BTC/JPY – ビットコイン 日本円

    しかし、2021年5月13日にアメリカの電気自動車大手テスラの創設者であるイーロン・マスク氏が、ツイッターに画像1・画像2のような投稿をしたところ、ビットコインの価格は約1カ月で約50パーセント下落した。

    画像 1

    ・画像1[出典] イーロン・マスク氏のtwitterの2021年5月13日の投稿. 参照日: 2022年11月8日.参照先:https;//twitter.com/elonmusk/status/1392602041025843203

    画像2

    ・画像2[出典] イーロン・マスク氏のtwitterの2021年5月13日の投稿. 参照日: 2022年11月8日.参照先: https;//twitter.com/elonmusk/status/1392780304138473473

    画像1と画像2の投稿は、化石燃料の増加による環境への影響から、テスラの車を購入する際のビットコインでの決済を停止するという内容である。そして、イーロン・マスク氏は、ビットコインのマイニングとトランザクションでの化石燃料の使用が急速に増加していること懸念しており、ビットコインをはじめ仮想通貨が環境に配慮した持続可能なエネルギーを利用できるようになるまでは取扱わないということである。マイニング(採掘)は、「新規発行されるビットコインをマイナー(採掘者)に与える仕組みで、日々行われているビットコインの取引が適正なものかどうかを判断して承認する作業である。そして、この作業を行わないと、世界中で行われている取引が枝分かれをして、どれが正しい取引なのかが分からなくなってしまうのである。[2] 」トランザクションは、簡単に表現すると仮想通貨の取引のことをいう。また、「複数のトランザクションをまとめたものをブロックと呼び、このブロックがチェーン状に連なって保存された状態のことをブロックチェーンという。[3]」仮想通貨を送金するときに、署名が求められる。そして、仮想通貨を取引すると手数料がとられるが、「この手数料は新規に育成されたブロックの承認作業、マイニング(採掘)を行ったマイナー(採掘者)の報酬となる。マイナー(採掘者)は、そのトランザクションが信頼できる確実なものかを検証するために、アドレスや署名が不正なものでないかをチェックする作業を行うのである。また、不正なトランザクションではないと承認され、ネットワーク上に広がる。トランザクションの量が多いと、アドレスや署名の照会に時間がかかり、検証作業はとても複雑で膨大な計算が求められるのである。[4]」よって、マイニングとトランザクションには、膨大な計算量が必要で、多数のコンピュータを動かし、莫大な電気を消費する。そして、消費する電気を供給するために化石燃料で発電したら環境に影響を与えるということである。以上のことから、イーロン・マスク氏は、画像1・画像2のような投稿をしたのである。また、この投稿には、テスラ社の仮想通貨決済にビットコインのエネルギー消費量の1パーセント未満の別の仮想通貨の採用を検討していることも明言した。そして、この投稿から金融機関や個人投資家等のビットコインの保有者の間でビットコインへの期待が薄れ、また仮想通貨への信用不安により大幅に下落し、ほかの仮想通貨にまで影響した。また、この下落は、同月に、中国政府がビットコインのマイニング禁止を指示したことも影響している。また、中国がこれまでに仮想通貨市場に与えた規制や指示は表1の通りである。

    表 1

    [出典] https://bitcoin.dmm.com/column/069株式会社DMM Bitcoin. (2022年4月13日). DMM Bitcoin. 参照先: ビットコイン価格と中国情勢の関係を解説の記事と表を基に作成

    . 参照日: 2022年11月18日,

    ICOは、「Initial Coin Offeringの略で、新規仮想通貨公開を指す。また、クラウドセール、トークンセール、トークンオークションと呼ばれることもある。ICOは、企業が仮想通貨を発行し、それを購入してもらうことで資金調達を行う方法であり、企業の多くはこれまで、株式を発行し、IPO(株式の新規上場)を行っていた。株式を上場するためには多くの審査があるが、ICOでは、審査のような手続きがないため、スムーズに資金調達できる。しかし、最近では、ICOを使った詐欺的な事件が問題視されている。[5]」また、スムーズに資金調達する例としてクラウドファンディングがあるが、ICOと異なる点もある。まず、出資・投資形態としてクラウドファンディングでは、金銭(法定通貨等)で出資や投資をするが、ICOの場合には、仮想通貨での出資である。また、「クラウドファンディングでは、事業者がプロジェクトに出資してくれた投資家に、商品や特典、サービスなどを提供しているが、ICOの場合は、投資家にトークン(コイン)や仮想通貨などが配布されるのである。[6]」また、配布された仮想通貨を、将来的に価値が上がることを期待して、保有し続けることや、ほかの仮想通貨に換えて運用することも可能である。そして、中国でビットコインが規制された理由として、ICO等による詐欺被害防止等の事例が挙げられるが、国が直接管理できないということも理由として挙げられる。「中国政府は、中国国内からの資本流出を止めるために、厳しい資本規制をしている。その規制の抜け穴として利用されていたのがビットコインである。ビットコインは匿名性が高く、法定通貨における中央銀行のように管理を行う組織が存在しない。そのため、ビットコインの普及により、中国政府の資本規制が効力を失うことを警戒したのである。[7]」その後、ビットコインの価格は2021年8月頃に反発し、9月には、中南米で最も貧しい国の1つといわれているエルサルバドルで、世界で初めての仮想通貨(暗号資産)のビットコインを法定通貨に採用した。そして、10月15日には、アメリカ証券取引委員会(SEC)が、ビットコインETF(上場投資信託)を承認し、翌月には、ビットコイン史上最多値の約770万円を記録した。しかし、同月の26日には、新たな新型コロナウイルスの変異種の感染者が確認されたことによる影響からリスク資産等を手放す投資家が増え、ビットコインは、1日で7.5%の下落、最高値を記録した11月9日からでは20%下落した。その後、反動により上昇し、12月には、大手生命保険会社等の多額の資産を持つ金融機関がビットコインなどの多数の仮想通貨への投資を始めたことでさらに上昇した。しかし、2022年2月以降、ロシアによるウクライナ侵攻の影響やアクシーインフィニティと呼ばれる仮想通貨ゲーム内で使われていた通貨のハッキングによりビットコインをはじめ該当する仮想通貨が下落した。また、5月には、「価格変動が低いとされていた、UST(TerraUSD)と呼ばれるステーブルコインと、そのトークンであるLUNA(Terra)と呼ばれるものも暴落し、仮想通貨市場から6兆円が消えたLUNA(Terra)は、価格が常に1米ドルに連動することを目的としたステーブルコインであり、LUNA (Terr a)ブロックチェーンで稼働するUST(TerraUSD)は、高い利回りで提供していたことが魅力であった。[8]」この暴落は、「膨大な資産を持つ攻撃者による意図的に引き起こされたものだと言われている。[9]」LUNA(Terra)は、当時、仮想通貨時価総額ランキング9位の仮想通貨であったこともあり、多くの仮想通貨が信用を失い、LUNA(Terra)は99%の下落、ビットコインは40%下落した。その後、11月に大手仮想通貨取引所のFTXが経営破綻に追い込まれ、11月11日に米連邦破産法11条に基づく破産申請をしたことにより、仮想通貨に対しての不安感が高まりさらに下落した。2022年11月22時点でビットコインは、200万円台前半を推移している。

    [1] [株式会社DMM Bitcoin, 2021]参照先: ビットコインの半減期とは?価格動向の予測に必須の知識

    [2] [仮想通貨ビジネス研究会, 2017/7/31]参照先: 60分でわかる 仮想通貨ビットコイン&ブロックチェーンP.44

    [3] [堀龍市, 2019/12/25]参照先: 暗号資産の基本と仕組みがよくわかる本P48

    [4] [QUOINE株式会社, 2018]参照先: トランザクションとは

    [5] [SMBC日興証券, 日付不明]参照先: 初めてでもわかりやすい用語集 ICO

    [6] [Battery, 2017]参照先: 今話題の仮想通貨によるICOとクラウドファンディングの比較

    [7] [株式会社DMM Bitcoin, 2022]参照先: ビットコイン価格と中国情勢の関係を解説

    [8] [ITmediaビジネスONLiNE, 2022]参照先: 6兆円が消えた「LUNA-UST騒動」 危ないステーブルコインの特徴

    [9] [ビットコイン狂騒曲, 2022]参照先: 【-99%暴落】ステーブルコインUSTとLUNAが崩壊した理由と顛末

    第2項 仮想通貨の問題点

    仮想通貨の問題点は2つある。1つ目は、前項でも触れたが価格変動が激しいことである。仮想通貨は短期間で大きな利益を出せる可能性もあるが、その反対もある。

    表 2                                                             

    [出典]https://angou-shisan.biz/basic/5333/. Crypto Guide. (2022年8月9日). 参照日: 2022年11月22日, 参照先: 仮想通貨(暗号資産)の国別の保有率(所有率)のランキング表を基に作成

    表2は、人口に対する国別の仮想通貨の保有割合であるが、1位のベトナムの保有率でさえ人口の半分以下である。また、ほとんどの国が一桁台であり、仮想通貨の価値の急落やハッキング、流出、詐欺等のニュースをよく目にする影響で保有したいと思う人が少ないと考えられる。また、機関投資家や個人投資家等の大量保有者やインフルエンサーの言動で資産価格に影響が出やすく、価格変動も激しいため、日本で、エルサルバドルのようにビットコイン等の仮想通貨を法定通貨にするには程遠い状況である。しかし、各国の仮想通貨の保有割合が人口の半分以上になり、仮想通貨事業に参入する企業が増加すれば、現在ほどの価格変動の激しさはなくなるのではないかと考えられる。2つ目の問題は、税金面である。仮想通貨は、給与や退職金以外の所得で20万円以上の利益が出た場合、確定申告をする必要があり、税金を納めなければならないが、仮想通貨を購入して、利益は20万円以上であるが、売却せずに保有している状態であれば、確定申告をする必要がなく、税金を納める必要もない。近年、仮想通貨に対しての法整備がされる中で、脱税の取り締まりが強化されている。しかし、金融庁に登録されていない海外の取引所や、また、マイナンバー等の個人情報を登録しないで取引ができる海外の取引所を利用して、税金の逃げ道を作っている人もいる存在するが、逃げ道を作ったことが国税庁や税務署に摘発さえた時は、所得税法第238条に抵触し、500万円以下の罰金もしくは5年以下の懲役、また、これらが併科されることがある。そして、「罰金の上限が500万円なら、所得税額が500万円を超える場合は罰金を納付したほうが安く済むと考えてはいけなく、所得税法第238条4項によると、脱税額が500万円を超えるとき、情状により罰金の上限を脱税額相当とすることができると定められている。[1]」ただし、脱税発覚後に逃亡や証拠隠滅の恐れがあると逮捕されてしまうこともある。脱税に関するペナルティーとして、ケースにもよるが税金の10 パーセントから50パーセントの税率で新たに課される。以上のことは仮想通貨の所得に限らず、すべての所得に適用される。株取引等の金融商品を取引した時の課税対象のタイミングは、保有しているものを売却した時や、株の配当金等を得るときに発生する。ただし、株の配当の税金は、申告不要制度が適用され、「原則として源泉徴収され納税を終わらせることができ、確定申告は不要である。[2]」そして、仮想通貨の課税対象のタイミングには、保有している仮想通貨を売却した時以外にも、仮想通貨で決済した時や別通貨への交換、エアドロップで仮想通貨を入手、マイニングによる報酬の取得、ステーキングの報酬による通貨の取得、そして、第三者にやり取りがある時等、目的や内容によって課税対象のタイミングは様々である。エアドロップは、仮想通貨の認知度向上のために配布するイベントのことで、指定された通貨を保有する等一定条件を満たすと無料で仮想通貨を受け取れるのであり、保有している枚数の10パーセントから100パーセント配布されることが多い。エアドロップで仮想通貨を入手した場合、「入手した時点での時価を損益として認識し、その金額がそのまま取得原価となり、入手した報酬額は全額課税対象である。そして、マイニングによって取得した仮想通貨は、取得した時点で損益が発生し、マイニングの際にかかった費用は経費として計上され、マイニングで取得した仮想通貨の時価とマイニングにかかった費用との差額が所得となる。[3]」ステーキングは、特定の仮想通貨を購入し、一定期間保有していることで利回りが得られるものであり、課税対象のタイミングは上記で説明したエアドロップと同じである。また、ステーキングは、最低購入金額や最低購入枚数が定められていることが多く、また、数か月から1年間購入した仮想通貨を引き出すことがほとんどできない。仮想通貨のステーキングによる利回りは、数パーセントから990パーセント等の高い金利のものまで存在するが、この定められた期間内に価格が暴落すれば元本割れをしてしまう可能性もある。銀行の金利より仮想通貨の金利のほうが圧倒的に高いが、かなりのリスクがあるため、金銭的に余裕がある人や元本割れしても生活に全く支障が出ない人以外には勧めることはできない。そして、最後に、第三者間でやり取りがあるときに目的や内容によっては課税対象となることがある。例として、仮想通貨の送金・贈与や貸し借りがある場合である。仮想通貨を贈与した場合、「仮想通貨を贈与した人に税金がかからないが(所得税法59条2項、60条1項2号)、一定額以上を受け取った人に対しては贈与税が課されるのである。[4]」仮想通貨に限らず、年間110万円以内の贈与は非課税だが、年間110万円を超える贈与の場合は課税対象となる。また、「贈与された時よりも、高い金額で売却した場合、その差額を利益として申告する必要がある。[5]」そして、貸し借りの場合は、「利子を付けて貸し借りをするケースでは、リターンとして受け取る部分に対して税金が貸し手側に発生する。例えば、1BTCを年利5%で貸し付けた場合、リターンとして0.05BTCを受け取ることができ、この場合、0.05BTCに対して課税される。また、無利子での貸し借りの場合、一見税金がかからないように感じるが、[6]」借り手側に贈与税や所得税がかかる場合もある。このように、様々なやり方で仮想通貨を増やすことができ、報酬を受け取ることができる一方で、税金の仕組みが複雑だという問題がある。仮想通貨を保有している人の間では、仮想通貨で多額の利益を出した人は高額な税金を支払わなくてならないことから税金地獄ともいわれている。また、買い物をした際、現金で決済した時や、友人と現金の貸し借りをした時には税金がかかることはないが、仮想通貨の場合はかかる場合がある。そして、仮想通貨での売買ややり取りが多いと、申告の際の所得計算等が難化する。すこし手を抜き、過少申告すれば、加算税等のペナルティーが科せられるため、適正に計算し、税務処理をしなければならない。そのために、定期的に取引履歴等のデータの記録や管理をする必要がある。そして、その取引履歴を税務署や税理士事務所に持っていくことで、説明を聞きながら適正な申告をすることができ、その年の納税を終わらせることができる。

    [1] [ベリーベスト法律事務所 名古屋オフィス, 2022]参照先: 暗号資産のせいで脱税疑惑? 仮想通貨の所持で罪に問われる可能性はあるか

    [2] [アセットキャンパス OAG税理士法人, 2021]参照先: 株の配当金と税金のしくみ ~確定申告で税金を取り戻そう~

    [3] [AERIAL PARTNERS, 2022]参照先: 2022年最新 仮想通貨取引の課税対象となるタイミング8選. (仮想通貨・暗号資産の税金)損益発生のタイミング

    [4] [AERIAL PARTNERS, 2022]参照先: 第三者との仮想通貨(暗号資産)取引がある場合の税金

    [5] [相続サポートセンター, 日付不明]参照先: 仮想通貨は相続税・贈与税の対象!評価の方法や相続人が引き出せないケース

    [6] [AERIAL PARTNERS, 2022]参照先: 第三者との仮想通貨(暗号資産)取引がある場合の税金

    今後の仮想通貨市場

    仮想通貨への期待と不安

    現在、ビットコインをはじめとした仮想通貨は低迷しており、2022年11月には、米国の仮想通貨取引所FTXの経営破綻、そして、その関連企業であった仮想通貨の貸し付けを手掛ける米国のブロックファイが経営危機に追い込まれ、同月で仮想通貨大手企業2社目となる米連邦破産法11条に基づく破産申請がされた。これにより、仮想通貨への信用不安がさらに高まってしまった。しかし、2024年の5月頃には、ビットコインの半減期がある。仮想通貨に対しての知識が一定以上あり、これまでの相場を理解している人であれば、2024年の1月から3月頃の間に半減期を意識し、仮想通貨を購入する人が増え、また、仮想通貨を大量保有する個人投資家や金融機関が少なからず現れると思う。しかし、資金に余力のない人や相場に対しての理解がない人は、大量保有する投資家や金融機関に振り回されるのではないかと考える。

    仮想通貨市場を盛り上げるためには

    最近では、様々な業界がブロックチェーン、仮想通貨を取り入れた事業に参入している。また、2年程前からNFTという言葉をよく耳にする。NFTとは、Non Fungible Tokenの略であり、別名非代替性トークンとも言われている。NFTは、「ブロックチェーンを基盤にして作成された代替不可能なデジタルデータ[1]」やデジタルアートのことである。NFTには、ゲーム内で使用するアイテムや、電子化されたアートやトレーディングカード、スポーツ選手の映像や写真、会員権、不動産等がある。これらを購入は、全て仮想通貨である。そして、日本でNFT会員権を所有していると、仮想通貨決済を導入している飲食店で安く食事を済ませることができる。また、NFT会員権を所有している人しか入店することができない店も存在し、こういった店では、仮想通貨やNFTアート等を保有している人が多いが、日本全体で見れば、ほんの一部にしか過ぎない。また、NFTを使ったP2Eゲーム(Play To Earn)というものがあるが、別名ブロックチェーンゲームともいわれている。P2Eゲームは、遊びながら仮想通貨を稼ぐことができ、初期投資なしでも稼ぐことができる。よって、リスクを抱えることなく遊ぶことができ、稼ぐこともできる。また、そこで稼いだ仮想通貨を別通貨に交換し、運用することもできるため、リスクを抱えずに仮想通貨の売買や保有をした場合には、P2Eゲームから始めた方が良いと考える。ただし、日本では、このようなゲームの存在を知らない人がほとんどであると思う。そのために、ゲーム業界大手のソニーや任天堂、スクウェア・エニックス、バンダイナムコ、カプコン、コナミ等の企業がブロックチェーン技術を使ったP2Eゲーム事業に参入すれば、今まで仮想通貨に興味がなかったゲーム愛好家も数千円程度の仮想通貨やNFTアイテムを購入するのではないかと考えられる。また、2021年の日本国内ゲーム人口は5535万人であるため、もし、1人1000円程度の仮想通貨やNFTアイテムを購入した場合、日本国内だけでの取引額が500憶円を超える。日本の大手ゲーム企業がP2Eゲームを開発し、それゲーム愛好家に触れてもらい、遊びながら仮想通貨を稼ぐ楽しさを知ってもらえれば、日本国内でも仮想通貨市場が盛り上がると思う。しかし、日本には、P2Eゲームを開発するブロックチェーンディベロッパーが海外に流出しており、開発できる人が少ないのである。その理由として、税制面である。多くのブロックチェーン起業家やディベロッパーは巨額の税金の影響やその納税により、プロジェクトの推進力が失われることからに日本をでて海外で起業し、開発して新しい価値を生み出している日本人が少なくない。日本は、ブロックチェーンや仮想通貨に対しての法律が厳しい分、優秀なブロックチェーンディベロッパーを海外流出していることで、世界と比べてもブロックチェーン事業はかなりの遅れをとっている。これ以上の遅れをとらないことと、優秀なディベロッパーは海外に流出しないためにも、税制面を見直し、法整備をする必要があり、これは、仮想通貨市場を盛り上げるための大前提である考える。

    [1] [CRPTO INSIGHT powered by ダイヤモンド・ザイ, 2022]参照先: NFTとは?仕組みや特徴、関連するおすすめの仮想通貨を初心者向けに解説!

    まとめ

    ビットコインの価格は、低迷しており、大手仮想通貨取引所FTXの経営破綻や、大手仮想通貨融資会社のブロックファイの経営破綻により、仮想通貨への信用不安は高まっており、この連鎖による影響は少なからず出ると考える。2020年以降のビットコインをはじめとした仮想通貨の価格決定要因として、4年に1度訪れる半減期の影響や、米国の電気自動車大手テスラの創業者イーロン・マスク氏による発言、中国政府による仮想通貨規制、新型コロナウイルスの影響、ロシアによるウクライナ侵攻、海外で作られたブロックチェーンゲーム内で使われていた仮想通貨の流出及びハッキング、そして、大手仮想通貨取引所の破綻等の影響等があることが分かった。仮想通貨を保有している人の多くは、将来的に価値が上がることを期待している。しかし、仮想通貨市場では急な出来事によって価格の変動が激しくなることがある。韓国では、借金で仮想通貨を購入して一発逆転を狙う若者がいるが、仮想通貨は短期間で価値が10倍になることもあれば、10分の1以下になる可能性も十分にあるため、このようなリスクを理解した上で、仮想通貨への投資及び運用をしなければならない。仮想通貨への投資金額は、投資した金額を全額失っても、生活に全く支障がでないぐらいが十分なのである。